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ゲートウェイでのRenoからHighSpeed TCPへの変換テクニックを利用 したRenoの性能改善の方法についての研究

概要

TCPは輻輳を回避する自律的なフロー制御プロトコルです。TCPは輻輳ウィン ドウ(congestion window)によってフローの流量を制御しています。現在広 く用いられているのはRenoと呼ばれるTCP実装であり、Renoの輻輳回避フェー ズ(congestion avoidance mode)における輻輳ウィンドウの増減は次に示す 規則によります。

  1. パケットの損失があったときウィンドウサイズが半分になる。
  2. パケットが肯定されたときウィンドウサイズは現在のウィンドウサイズ 分の1となる。つまり、現在のウィンドウサイズをwとすれば、w:=w+(1/w)。

TCPはこの法則に従って、流量を少しづつ増したり減らしたりして様子をうかがい ながら、輻輳を防いでいます。

Renoを広帯域環境や高遅延環境下で用いると十分な性能が発揮できないこと が知られています。このことは、従来では衛星リンクのような高遅延環 境下でしか問題になりませんでしたが、広帯域の(例えばギガビットの)広域 網(WAN-Wide Area Network)の普及が進むに従って顕著にRenoの性能限界が 見えてくるようになりました。

Renoの性能限界を克服するため、どうすればTCPの自立的な輻輳制御を守り つつ性能を改善することに焦点をあて、新しいTCPの方式が提案されてき ました。具体的にはScalable TCPFASTTCP-Vegasといったものです。

これらのプロトコルは完全とはいえませんが、いくつかの重要な結果をもた らしたようです。そして、これらの研究結果の考察から、HighSpeed TCPと呼ばれる 輻輳制御方式が提案されています。TCPのドンともいえるSally Floydさんが HighSpeed TCPはどうかということを、RFC3649 ``HighSpeed TCP for Large Congestion Windows'' Sally Floyd. Experimental, December 2003として 発表しています。したがって、HighSpeed TCPへと改良が進むことはほぼ確 実であると私自身は考えています。

ところで、HighSpeed TCPには問題があります。Renoの TCPコネクションのフローとHighSpeed TCPのコネクションのフローとを 同時にネットワークに流した場合において、ある条件下において1:22程度の 差が出るということがネットワークシミュレータNS-2によるシミュレーショ ンによって明らかになっています(Evandro de Souzaらによる)。この問題を解決するためにはRenoを使っているホス トをHighSpeed TCPに置き換えてしまえば良いわけですが、古いコンピュー タやメンテナンスが高価であるスーパーコンピュータではそう簡単にOSを入 れかえたりすることはできないでしょう。

と、ここまでが私の前置きです。したがって、RenoのフローをHighSpeed TCPのフローに変換することができれば、広帯域・高遅延環境下における Renoのパフォーマンスの改善とフェアネスの改善を同時にはかれるのではな いだろうかとにらんでいます。

以上の考察より、私はRenoからHighSpeed TCPにフローの変換を行う研究 を行うことにしました。このように劣悪なネットワーク環境下における性能低下を防 ぐ目的で利用される中継器を世の中ではRFCのターミノロジでPEP(Performance Enhancement Proxy)と呼ぶそうです。この言葉を借りれば「Reno-TCPとHighSpeed TCPためのPEP機構の研究」と言えます。

高速トランスポート層プロトコルのパッチの系列

いろんなパッチがあって混乱してしまいそうなのでまとめようかと思い つつ..

研究用リンク

参考


isogaki@jaist.ac.jp  Lynx, Internet Explorer, Opera, Mozilla, Netscape, w3mで確認済み.